第23回
Le Plac'art Photo
2014/2/18 UP

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第1回 マザリーヌ書店
第2回 クーラン ダール
第3回 ミカエル・セクシク書店
第4回 オ・ザール・マジャール
第5回 書店-ギャラリー
    エマニュエル・ユタン

第6回 デ・アーシヴ書店
第7回 ドュ・カメー書店
第8回 ラ・ポルト・エトロワト
第9回 ル・ヴァンティエーム・
    エ・セ・スールス書店

第10回 アバンスラージュ書店
第11回 F.ドゥ・ノーベル書店
第12回 ドュ・パッサージュ書店
第13回 アール&リブリ書店
第14回 シュマン・デ・アール
第15回 ジュソーム書店
第16回 A バルザック A ロダン
第17回 OFR書店&ギャラリー
第18回 モールタメール書店
第19回 クロエ&
     ドニ・オザンヌ書店

第20回 ジャン-エティアンヌ
     ・ユレ書店

第21回 フィシュバシェル書店
第22回 ラルダンシェ書店



パリ6区、地下鉄のオデオン駅からセーヌ河に向けて歩を進め、マザリーヌ通り手前のランシアンヌ・コメディー通りで、日本の写真集がやけに目立つ細長いショーウインドーに気がついた。荒木経惟の「愛しのチロ」、須田一政の「角の煙草屋までの旅」や明観銘の掛け軸まで掛かっている。店内の棚では「雲隠れ温泉行き」(村上仁一)、「月がついてくる」(福山えみ)、「野島康三写真集」、「神々の残映」(吉田元)、「ヒロシマ モニュメント2」(上田ヒロミ)などのタイトルも見える。

店舗正面

5番地の入り口通路の左脇を活用している小さな店だが、写真専門の古書店のようである。日本の写真家の写真集を飾っている古書店をパリでもよく見かけるが、これほどまとめて揃えている店は珍しい。何という店名だろうと物色していると、中庭にある事務所から30歳前後の若い男性が顧客らしき人を伴ってショーウインドーに近づき、鍵を開けて中に入り、棚から書籍と取り出して見せている。この仕事が根っから好きなのだろう、水を得た魚のような溌剌さを感じる。

店を再訪して取材を申し込むと「私は第2次世界大戦後の日本の写真家については自他共に認めるフランスの第一人者です」と自己紹介する。店は夫人の赤木コテール伸江氏と共同経営となっており、日本語でのEメール問い合わせも可能である。

店主クレマン・コテールと
赤木コテール伸江夫妻

店主クレマン・コテール氏は南仏のヴァランス出身で、2004年にパリに上京して美術書出版の大手フラマリオン社の販売部に勤務を始めた。そのうち写真集の面白さに引き付けられ、「ことに日本の写真家の写真集にはまった。写真集への興味はつのっていき、2008年開店に至った」というから開店5年目にあたる。

日本の写真集に興味を持つ理由を尋ねると「欧州の白黒写真は軽快なグレイ(灰色)が主体ですが、日本の白黒写真は陰陽が強い。日本の写真家の世界は、欧州人にとってはエキゾティックな世界で、日本のマンガに描かれる人物や世界と共通点があります。1960年代から70年代の日本の写真界は日本スタイルと言える独自の世界を創りました。代表例は荒木経惟、森山大道、中平卓馬、高梨豊などが挙げられます。荒木の出版物は400冊にも上ります」と話はつきない。

店内

フランス人が日本に関心を抱くきっかけは、かっては「フジヤマ、ゲイシャ」、造形美術では漆や陶芸などが定番だったが、コテール氏は1990年代からフランスでの人気が爆発した「日本製マンガとアニメ」で少年期を送った新世代であることがよく分かった。
「フランスの写真家ではアンリ・カルティエ-ブレッソン(Henri CARTIER-BRESSON。1908~2004年)やアントワン・ダガタ(Antoine D'AGATA。1961年生)などが好み」とも語るが、ホームページを一覧すると店の品揃えの特徴がよく分かる。開店翌年の2009年からカタログをホームページで掲載しているが、2012年版カタログで紹介されている37点のうち、石元泰博の「ある日ある所」(1958年)、石内都の「アパートメント」(1978年)、「季刊 写真映像」(1969~1971年)など15点が日本、ラテンアメリカが12点、ヨーロッパが5点、アメリカが3点の割合となっている。

2011年の日本カタログでは深瀬昌久の「カラス」(1986年)、平地勲の「温泉芸者」(1975年)など31点、2010年春の日本カタログでは土門拳の「筑豊のこどもたち」(1960年)、福島菊次郎の「戦場からの報告。三里塚・終りなきたたかい」(1977年)、木村壮八の「銀座界隈」(1954年)など34点が掲載されているが、1970年代が中心となっている。

店内

 売れ筋は当然なことに日本の写真集である。「30歳代から50歳代の固定客が30人います。 このうち10人は頻繁に来店して親交を深めています。ニッチな商法ですが、固定客が30人存在すれば充分やっていけます。要は顧客の好みを知ることで、これはあの人向けと顧客の顔を思い浮かべながら仕入れています」。

仕入れは、個人が売りに来たり、仲間の古書店からの購入によるが、これに日本やベルギーの写真見本市などへの買い出しが加わる。アメリカの写真集はフランスでも多く出回っているので、アメリカに買出しに行く必要はない、とのことである。

ショーウインドー

店内も含めたストック点数は1,000冊にすぎない。「今の時代はストックを抱える必要はありません。固定客をしっかりつかむことが大事で、ストックは少なくなるようにしています。美術古書店の将来はますますコレクション本か自費出版本の方向に進んでいきます」と明言する。

国立高等写真学校ENSPがあり、「ヴァン・ゴッホの街」と並行して「写真の街」として力を入れている南仏のアルルで開催される写真見本市にも出店しているが、見本市やホームページで興味を抱いた顧客に来店してもらって、写真論議に花を咲かせながら商いをする、という愛好者クラブ的な商法と言える。

「伝票処理に時間を費やされてしまうのが唯一の苦労ですが、自分のペースで仕事ができるのが楽しい」との話しを聞きながら、今後、新世代が経営する、小粒だが個性が強い美術古書店が増えて行きそうな予感がした。


店名

Le Plac'art Photo

Le Plac'art Photo

住所

5 rue l'ancienne Comédie 75006 Paris

電話

01 43 25 15 11

HP

www.placartphoto.fr

店主

Clément KAUTER & Nobue AKAGI KAUTER

設立年

2008年

従業員

2人


 

 広畠輝治   ブログ : 「広畠輝治の邪馬台国吉備・狗奴国大和説」

1948年1月
1980年
1988年


2002年4月

2009年1月

横浜に生まれる
から在仏ジャーナリスト
にプレス・ヒロハタ社設立
主に日経新聞社グループと電通向けに記事・レポート配信とコーディネート。 やきものネット・パリ通信員。
「邪馬台国 岡山・吉備説から見る古代日本の成立」(制作‐コエランス酉福ギャラリー、発行‐神無書房)を出版。
「邪馬台国吉備説 神話編」(制作‐酉福ギャラリー、発行‐神無書房)を出版。

邪馬台国 岡山・吉備説から見る
古代日本の成立
広畠輝治著  2800円
邪馬台国 吉備説 ー神話篇ー
日本古代史をヨリ深くヨリ広く学ぶために
広畠輝治著  4700円
  
 

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