第5回
書店-ギャラリー
エマニュエル・ユタン
2013/4/23UP

▶Back number
第1回 マザリーヌ書店
第2回 クーラン ダール
第3回 ミカエル・セクシク書店
第4回 オ・ザール・マジャール



凱旋門からフリードランド通りを下って百貨店街へと続くオスマン大通りに入り、オスマン通りの生みの親であるオスマン男爵像にぶつかって右折するとエマニュエル・ユタン氏の店があるアルジャンソン通りに入る。店舗の縁取りが真紅の「Galerie Everats」と濃紺の「Galerie Gavart」の2店の絵画ギャラリー、濃いピンクのユタン氏の店、深緑の額縁専門店「Encadrement」と、紅、紺、ピンク、緑が好対照になって、あまり目立たないがシックなパリらしいミニ・ギャラリー通りとなっている。


ユタン氏の店の正面上には「書店-ギャラリー」と明記され、ショーウインドーや店内にデッサン・版画類も展示されていることから、画廊も兼ねているようである。

店舗内部

「私の店はコレクション向けの古書と関連作品のみを販売しており、俗に言う中古品(Occasion)を扱う古本屋ではありません。対象は20世紀の美術と文学で、映画などは除外しています」と開口一番、月並みな古書店ではないことを強調する。50歳前後のやせぎす長身のインテリ風であるが、詮索するような詳しい質問を嫌っているようで、「ストックは店内のみです。量より質を重視しており、ストック数は気にしていない」と応対がそっけない。通りすがりの客には敷居が高いようである。

「店の外からの写真撮影は自由だが、店内はこの角度からだけ」と厳しく、本人の写真撮影も拒まれたが、話しているうちに少しづつ打ち解けてきた。

開店は世紀が改まった2000年で、それ以前はギャラリー(画廊)に勤務していた。その頃から自分自身が稀少本のコレクターで、その情熱が高じて自分の店の開店に至った。

主な顧客は長い付き合いがあるコレクターと美術館関係者で、自分の方から推薦することは少なく、むしろ顧客の方から探している書籍を指定してくる場合が多い。

 「お客さんが注文した古書や珍しいモノを探し出すとすぐに売れるが、そこに至るまでが難しい。その苦労は探しているモノが見つかった時の達成感で吹き飛んでいく」。

店舗内部 右側

カタログ販売などを通じた外国からの注文は3分の1から4分の1あたりだが、インターネットの古書販売サイトである「アベブックス(AbeBooks)」や「レアブック(Rare Book)」が新しい顧客を呼び込む良い媒体になってきている。

販売カタログの中から、一般にも馴染みがある作家のモノを拾っていくと、確かに19世紀末から現代に至る美術史を彩る貴重なものを数多く散見できる。
 以下、例を挙げてみる。
―1889年の印象派と総合主義(サンテティズム)グループ展カタログ。
―1907年にドイツで発行された、クリムト(Klimt)のエロティックなデッサン画15枚を含んだ「Die Hetaerengesprache des Lukian」(限定450部発行)。
―1920年に発行されたシュルレアリスムの提唱者アンドレ・ブルトン(André BRETON) の「Les Champs Magnétiques」(限定180部で発行)。
―ジャン・コクトー(Jean COCTEAU )デッサン集(1923年発行)。
―1935年のシュルレアリスム展カタログ。
―サルヴァドール・ダリ(Salvador DALI )の「Metamorphosis of Narcissus」(1937年発行)。
―ベルギー生まれのフランスの詩人・画家アンリ・ミショー(Henri MICHAU)の絵とデッサン集(1946年発行)。
―アンディ・ウオルフォールの「Andy Warhol's Index」(1967年発行)。

リトグラフでは、シャガール(Marc CHAGALL )がギャラリー・マーグの経営者エメー・マーグ向けに作成した年賀カード「Voeux pour 1960」やドュビュッフェ(Jean DUBUFFET)の「Le Salut de la Fenêtre」(1944年)などが目立つ。
また小部数の発行で知られる「Les Editions de Rivières」と「Edition Monique Mathieu 」の出版物の扱いでも定評が高い。  

「若い世代は書籍よりもデジタル機材への関心を強めているから、若いコレクターは減少していき、古書やデッサン・版画類の市場は狭まり、よりエリート的なものになっていくだろう」と将来を予測しているが、言葉少なの中で、情熱が持てる仕事を誇りにしている様子から未来への不安はなさそうな印象を受けた。


店名

Librairie-Galerie Emmanuel HUTIN

住所

5 rue d'Argenson 75008 Paris

電話

Tel.01 42 66 38 10
Fax.01 42 66 33 38

店主

Emmanuel HUTIN

設立年

2000年

従業員

1人


 

 広畠輝治   ブログ : 「広畠輝治の邪馬台国吉備・狗奴国大和説」

1948年1月
1980年
1988年


2002年4月

2009年1月

横浜に生まれる
から在仏ジャーナリスト
にプレス・ヒロハタ社設立
主に日経新聞社グループと電通向けに記事・レポート配信とコーディネート。 やきものネット・パリ通信員。
「邪馬台国 岡山・吉備説から見る古代日本の成立」(制作‐コエランス酉福ギャラリー、発行‐神無書房)を出版。
「邪馬台国吉備説 神話編」(制作‐酉福ギャラリー、発行‐神無書房)を出版。

 

->戻る

(C) SHINARTBOOKS All rights reserved