第11回
F.ドゥ・ノーベル書店
2013/7/17 UP

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第1回 マザリーヌ書店
第2回 クーラン ダール
第3回 ミカエル・セクシク書店
第4回 オ・ザール・マジャール
第5回 書店-ギャラリー
    エマニュエル・ユタン

第6回 デ・アーシヴ書店
第7回 ドュ・カメー書店
第8回 ラ・ポルト・エトロワト
第9回 ル・ヴァンティエーム・
    エ・セ・スールス書店

第10回 アバンスラージュ書店



パリ美術大学があるボナパルト通りは、マカロンが日本でもブームとなって以来、マカロン・パリジャン専門店ラデュレを訪れる日本人旅行者が格段と増えた。残念ながらほとんどの人がラデュレの手前に位置するF.ドゥ・ノーベル書店を素通りしていくが、誰もがパリ第1の美術専門古書店と認める老舗中の老舗である。

これまで取材してきたパリの美術古書店の幾人かの店主から「もうドゥ・ノーベルの取材は済ませたか」と質問をうけていたので、店主は業界から一目置かれている長老の男性だろう、と連想していた。ところがフランソワーズ・ドゥ・ノーベル店主は「老けた顔を見せたくない」と写真は拒んだが、上品さに加えて人当たりが優しい、魅力的な女性だった。

店舗内 右側

「1885年に曾祖父がベルギーのブリュッセルで古書店を開店して以来ですから、私は四代目となります。1920年に父がパリに出てきて、サン・シュルピス通りに店開きした後、1930年に現在地に移りました。私は1967年、23歳の時から店に勤務して、以来45年間、ボナパルト通りからパリの変遷を見つめてきました」。

店舗内 左側

売り場面積は他店の平均より2倍ほど広く、同じ場所で80年以上も続いてきた老舗だけあって、どっしりした風格をかもし出している。扱い分野は美術のすべてのジャンル、時代をカバーしており、新しい文献も出てくる理由から、新刊の美術書も扱っている。店主自身の好みは17~18世紀と言う。

「苦労は月末の経理。それでもお客さんが満足してくれるのが楽しみ。古書店は変化の時期となっていて、20年前に較べると経営は確かに厳しくなっていますが、業界が今後も続いていくことは間違いはありません」と言い切る。

一押し本

ギリシャ・ローマの古典時代が売れた時期もあったが、今はアールデコ(装飾アート)がよく売れるなど、時代の波もある。顧客は一般客も混じるが、文献家、骨董店や美術ギャラリー経営者などの固定客が主体となっている。国外からはアメリカ、ドイツ、スイス、イギリスからが多い。日本人もよく来店するが、今は中国人が中国美術の書籍を買いあさっていくのが目立っている。自店のホームページも運営しているが、インターネットの国際古書店ネットワークのアベブックス(Abebooks)やZVAB.com、フランス国内向けのレアブックス(Rarebooks)を通じた注文が増えている。

ショーウインドー

「客を引きつける工夫はあまりしていない」と語るものの、注意して陳列を見てみると、一押し本は背表紙だけを見せる縦置きではなく、表紙が見えるように平置きにしている。書棚やショーウインドーを見ても、縦置きの間に平置きを挟んで、強弱をつけている。長い間に身につけた独自の展示手法なのだろう。

店舗内 一階倉庫

平置きにした書籍を見ていくと、エル・グレコ、ピカソ、マチスなど知名度が高い画家関連もあるが、イタリアのルネッサンスからバロックへの橋渡しの役割をしたバロッチ(Federico Barocci。1526~1612年)の画集、「ウイリアム・コニンガン(アイルランドの政治家。1733~1796年)と古典志向芸術家のアイルランド・サークル」、「チェコの近代絵画」、「17~18世紀のトラパニ(イタリアのシチリア島)の赤サンゴ」、「ペルーの羽工芸」など、一般的ななじみは薄いが、その道の精通者にとっては見逃せない小粒だがピリリとした書籍が多い。ショーウインドーの展示の中では「宝石商ブシュロンの秘めた古文書」、「現代ジュエリーの創作家たち」、「新しい宝飾商」などジュエリー関連が目立った。

店舗内 地下倉庫

「ストックは何点くらいですか」と尋ねると「分かりません」とそっけない答えである。「例えば1万点とか2万点とか」と粘ってみても「分かりません」と同じ言葉を繰り返す。

「店の奥が事務所と倉庫になっています。倉庫は地下3か所にもあり、加えて父が引退後に住んでいた別荘にも数え切れないストックがあります」と言いながら1階と地階の倉庫に案内してくれた。

店舗内 棚ごとの整理番号

棚に整理番号を貼って蔵書を整理しているが、ストック量の多さに圧倒された。「ストックが何点あるか分からない」という言葉に間違いはなかった。図書館とは違って、生きている歴史の空間にいきなり放り出され、シュールリアリズムのアンドレ・ブルトン、実存主義のジャン・ポール・サルトル、推理小説家ジョルジュ・シムノンに登場するメグレ警部がふいに出現してもおかしくはない、という錯覚にとらわれた。

「いつかは引退されることになると思いますが、この店とストックはどうされる積りですか」とあえて聞いてみると、ドリス・デイが歌う「ケセラセラ」のセリフ「先のことなど分からない」を思いおこさせるような答えが返ってきた。

店名

Librairie F.De Nobele

Librairie F.De Nobele

住所

35, rue Bonaparte 75006 Paris

電話

01 43 26 08 62

HP

www.denobele.fr

店主

Françoise De Nobele

設立年

1885年

従業員

2人


 

 広畠輝治   ブログ : 「広畠輝治の邪馬台国吉備・狗奴国大和説」

1948年1月
1980年
1988年


2002年4月

2009年1月

横浜に生まれる
から在仏ジャーナリスト
にプレス・ヒロハタ社設立
主に日経新聞社グループと電通向けに記事・レポート配信とコーディネート。 やきものネット・パリ通信員。
「邪馬台国 岡山・吉備説から見る古代日本の成立」(制作‐コエランス酉福ギャラリー、発行‐神無書房)を出版。
「邪馬台国吉備説 神話編」(制作‐酉福ギャラリー、発行‐神無書房)を出版。

邪馬台国 岡山・吉備説から見る
古代日本の成立
広畠輝治著  2800円
邪馬台国 吉備説 ー神話篇ー
日本古代史をヨリ深くヨリ広く学ぶために
広畠輝治著  4700円
  
 

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