第3回
ミカエル・セクシク書店
2013/3/26UP

▶Back number
第1回 マザリーヌ書店
第2回 クーラン ダール

 ミカエル・セクシク書店はパリ5区、カルチェラタンの東端にあたるモンジュ広場から植物園ジャルダン・デ・プラントに向かうラペセド通りの中ほどに位置する小粋な店である。

店舗内

ショーウインドーを覗くと、美術本、ポスター、絵本などが入り混じっており、美術本主体の古書店なのか、アクセサリーや雑貨も扱う店なのか、特徴がつかめない。店内に入ると、古書と並んでポスターやマンガのキャラクターなどが所狭しと陳列されていて、ますます分からなくなる。

ステファン・シュフリキル氏

「当店は『好奇心の室(キャビネ)』をモットーとしています。1950年代から70年代末を対象として、イラストを主体に書籍、ポスター、デッサン、写真、オブジェを揃えていますが、保存状態が良いものだけを厳選しています」と共同経営者のステファン・シュフリキル氏がにこやかに応対してくれた。この手の店はパリで唯一、おそらくフランスでも唯一の店だろうと語るほど、個性が強い店である。

オーブリー・ビアズリーの
ポスター「ビーナス」

 「しかしこのポスターは20世紀初め頃のアール・ヌーボー時代のものに見えますが。」「確かにアール・ヌーボー時代のイギリスのイラストレーター・作家オーブリー・ビアズリー(Aubrey BEARDLEY。1872~1898年)の『ビーナス』です。なぜ、彼のポスターも扱っているかと申しますと」と言いながら、アメリカのアーチストであるスタンリー・マウス(Stanley MOUSE。1940年~)の3匹の犬が追われている「シーラクラブ第10回ビエンナーレ」のポスターを取り出した。

スタンリー・マウスのポスター
「シーラクラブ第10回ビエンナーレ」

スタンリー・マウスは1960年代半ばにアメリカで発生し、世界的に流行したサイケデリック・アートの代表作家だが、その源流はアール・ヌーボーにありビアズリーにつながっていく、という説明を聞いて、ようやく店の特徴がわかってきた。

 切り口は1950年代から70年代末のイラストであるが、孔雀が羽を広げていくように好奇心に掻きたてられて、関連するものは書籍、ポスター、デッサン、写真、オブジェなど末広がりになっていくわけである。1950年代から70年代のものならジャンルを問わず、冒険少年タンタンの生みの親で知られる漫画家エルジェ(Hergé )の追悼でアーチストが作品を寄せたイラスト集「エルジェを讃えて(Hommage à Hergé )」(80点のみの限定出版)も自慢の品目になっている。

この好奇心は創業者ミカエル・セクシク氏に由来する。少年の頃から古書店通いが好きで、大学ではグラフィズムを専攻し、パリ市内の書籍店で実務を学んだ後、友人のステファニー氏を誘って1997年にパリ12区で店開きをして、2006年に現在地に引越してきた。

写真集
「別府大観 (Fine Views of Beppu)」

仕入れはセクシク氏、販売・営業はステファニー氏の担当となっている。仕入れは同業者ネットワークや個人の持ち込みもあるが、セクシク氏がフランスだけでなく、アメリカやドイツなどの古書見本市をこまめに廻って集めている。セクシク氏は日本にも出掛けており、写真集「別府大観 (Fine Views of Beppu)」も同氏の好奇心から仕入れたものである。

 販売では2012年11月にパリのグランパレーで開催された「パリ・フォト(Paris Photo)2012」など展示会・見本市に出店し、カタログ販売も行っているが、あくまで店に来てもらって、実物をゆっくり見てもらうことが基本である。インターネットで店を見つけて、実物を見るために来店する国外からの客が増えている。 顧客を引き付ける手段として「他では見つからない、好奇心をかりたてるものを提案すること」を強調するが、地下倉庫のストックを入れ替えながら、ショーウインドーや店内に陳列する商品を3週間の頻度で変えている。常連客は来店する度に新しいものを見つけることを楽しみにしている。

店舗内 左側

 インターネットも巧みに駆使している。店を訪問した顧客のフォローとして自店のホームページで販売品の作者の履歴、制作に関する情報、逸話、歴史的な背景をビデオをまじえて詳細に紹介している。付加価値を提供することにより、販売品の価値を高め、第2の人生を持たせることが目的だが、フェイスブックを通じて新しい掲載に50人がすぐにアクセスする。

店舗内 右側

 「顧客が単独では見つけることができないモノを、非常に良い保存状態で提供することができるなら、古書店の将来は興味深い」とも話すが、古書店とギャラリーの双方の要素をとりまぜる運営はパリの古書店の新しい方向を示しているように感じる。


店名

Librairie Michael Seksik

lib_michael

住所

8 rue Lacépède 75005 Paris

電話

01 43 43 53 53

HP

www.librairiemichaelseksik.com

店主

Michael SEKSIK & Stéphane SCHOUFLIKIR

設立年

1997年

従業員

2人


 

 広畠輝治   ブログ : 「広畠輝治の邪馬台国吉備・狗奴国大和説」

1948年1月
1980年
1988年


2002年4月

2009年1月

横浜に生まれる
から在仏ジャーナリスト
にプレス・ヒロハタ社設立
主に日経新聞社グループと電通向けに記事・レポート配信とコーディネート。 やきものネット・パリ通信員。
「邪馬台国 岡山・吉備説から見る古代日本の成立」(制作‐コエランス酉福ギャラリー、発行‐神無書房)を出版。
「邪馬台国吉備説 神話編」(制作‐酉福ギャラリー、発行‐神無書房)を出版。

 

->戻る

(C) SHINARTBOOKS All rights reserved