第12回
ドュ・パッサージュ書店
2013/7/30 UP

▶Back number
第1回 マザリーヌ書店
第2回 クーラン ダール
第3回 ミカエル・セクシク書店
第4回 オ・ザール・マジャール
第5回 書店-ギャラリー
    エマニュエル・ユタン

第6回 デ・アーシヴ書店
第7回 ドュ・カメー書店
第8回 ラ・ポルト・エトロワト
第9回 ル・ヴァンティエーム・
    エ・セ・スールス書店

第10回 アバンスラージュ書店
第11回 F.ドゥ・ノーベル書店



パリの下町の歓楽街とも言えるグランブルヴァールに位置するグレヴァン蝋人形館の左手のアーケード「パッサージュ・ジュフロワ」は観光名所となってきて、ガイドさんに連れられてぞろぞろ歩く日本や中国からも含めた団体観光客が目立ってきた。

アール・ヌーボー時代の窓

パッサージュの中ほどに位置するドュ・パッサージュ書店はパッサージュが完成した1846年以来、書店として続いてきた。1995年に現店主ジャンリュク・ラングロード氏が購入して書店名は「Librairie du Passage」に替わったが、現在でも当時の書店名ポール・ヴュラン(Librairie Paul VULIN)の名が残されていて、2階の事務所の窓などにアール・ヌーボー時代の面影が残っている。

パッサージュ入り口(左)
とグレヴァン蝋人形館

特色は雨天に左右されないパッサージュの利点を活用して、細長い通路沿いに書台をずらりと並べて美術本を所狭しと陳列している点にある。表紙を保護するビニールカバーには「50ユーロが20ユーロ」とディスカウントを強調するラベルを貼られていて、ガイドさんの声につられて本を手にとる観光客も多い。

店正面

こうした光景から観光客目当ての美術古書店の印象を与えるが、子細に見ていくとレンブラント、カンディンスキー、モヂリアニ、ガウディなど馴染みがあるアーティストや子供向けの動物・植物図鑑など雑多な種類の中に、ことに造形美術の分野で専門性が高いものが混ざっている。例えば陶器では「日本の陶磁器」、「ジアン」、「ボルドー・ラロシェル」、家具・建築では「オート・ノルマンディー地方」や「レンガの矢はず積み」、「ランセット・アーチ」などである。腕時計も「クロノミーター(精度)基準の腕時計」、「時を刻むモンブラン」や「オメガの達人」などマニア向けが勢ぞろいしている。パッサージュを歩く度に、どういう店なのだろうと気になりながら通り過ぎてきた。

通路内の書台

その疑問は「ご承知のように美術品オークション会場ドゥルオが歩いて数分の距離にありますから、最大の顧客はドゥルオの競売人や周辺のアンティーク店・ギャラリーに勤める美術鑑定人です」のラングロード氏の一言で解けた。観光スポットであるから通りすがりの観光客も対象としているが、顧客の主体はドゥルオに関係する美術品の目聞きの人たちである。そういったプロの人たちでもオークションにかかる品々の真贋を確認する参考書を必要としていることを間近に聞いて、なぜか安心した。

ジャンリュク・ラングロード氏店主

「ドゥルオのオークションを目的にパリに来て、オークションの前後に立ち寄る常連客も多くいます」。先刻まで店内にいた中年のアメリカ人男性二人も常連客だと言う。大事そうに紙包みを抱えていたから、オークションで競り上げた品なのだろう。インターネット向けのホームページは運営しておらず、アベブックス(Abebooks)など古書店の世界ネットワークにも加盟しておらず、店舗での直接販売が主体である。オークションと観光がらみで、顧客の比率がフランス対国外で50対50(ことにアメリカ、日本、ロシア、中国が多い)と外国人の占める率が高いことも、この店の特徴となっている。

美術本の中での売れ筋はアール・デコ(装飾アート)、モード、ジュエリー、プリミティフ・アートで、ストックは店内地下と他所にある倉庫を含めて2万5000点を数える。

書台の陳列

ラングロード氏は店舗を購入する以前の30年間、出版社ビブリオテック・ディマージュ(Bibliothèque d'Image)を経営して、猿、亀、蝶々など動物各種の図鑑、「パリの風景1860~1920」など、約30冊を出版した。店頭の書台で販売されている子供向けの書籍も同社発行だった。出版業務は現在でもLANGLAUDE の社名で続けており、2011年に「昭和の広重」と呼ばれる川瀬巴水(1883~1957年)の「永遠の日本(Le Japon éternel de Kawase Hasui)」を出版している。

店舗内部

「古書店業界は過渡期にさしかかっています。もちろん存続していきますが、成功していくには売上げの3~4割を別の手段で得る必要があります」と美術古書店の今後を予測する。その別の手段として、ラングロード氏は某画家の水彩画を20部限定で複製印刷して画家のサイン入りで販売したり、写真ギャラリーを併設する計画を挙げた。

店名

Librairie du Passage

Librairie du Passage

住所

48 Passage Jouffroy 75009 Paris

電話

01 56 03 94 10

E-mail

librairiepassage@wanadoo.fr

店主

Jean-Luc LANGLAUDE

設立年

1995年(店舗自体は1846年以来)

従業員

3人


 

 広畠輝治   ブログ : 「広畠輝治の邪馬台国吉備・狗奴国大和説」

1948年1月
1980年
1988年


2002年4月

2009年1月

横浜に生まれる
から在仏ジャーナリスト
にプレス・ヒロハタ社設立
主に日経新聞社グループと電通向けに記事・レポート配信とコーディネート。 やきものネット・パリ通信員。
「邪馬台国 岡山・吉備説から見る古代日本の成立」(制作‐コエランス酉福ギャラリー、発行‐神無書房)を出版。
「邪馬台国吉備説 神話編」(制作‐酉福ギャラリー、発行‐神無書房)を出版。

邪馬台国 岡山・吉備説から見る
古代日本の成立
広畠輝治著  2800円
邪馬台国 吉備説 ー神話篇ー
日本古代史をヨリ深くヨリ広く学ぶために
広畠輝治著  4700円
  
 

->戻る

(C) SHINARTBOOKS All rights reserved