第1回
十八史略
2019/2/27UP

私は本を読むことが好きだ。本も好きだが、読むことはもっと好きだ。この喜びを始めて知ったのは小学生のころだろうか。私の小学生のころというのは昭和20年代から30年代にかけてのころで、勿論、テレビは無く、ラジオが娯楽の中心だった。「赤胴鈴之助」、や「少年探偵団」の放送を楽しみに聞いていたのを覚えている。活字媒体も豊富には無く、週刊誌などはまだ発刊されていなかった。月刊誌が主流だった。だから月刊の少年雑誌が近くの本屋から配達されてくるのが待ち遠しかった。毎日表紙からから裏表紙まで読みふけった。そのころ、我が家には戦前からの古書籍がかなり残っていて、物心つくころには、それらを読み始めてみたようだ。その中でも『十八史略』が好きで、いつもこの本を読みながら中国のことに思いをはせた。これこそ「本とのめぐりあい」ともいえるべき出来事だった。だから、中国に対する関心が異常に高くなり、自分の名前を中国風に読み変えてみたりもした。つまり、「青 山保」(せい ざんぽ)と。"保、たもつ"というのは私の幼名で、親が付けた名前だ。

この『十八史略』という本は、中国古史の歴代王朝の興亡を分かりやすく解説している書物だ。聞くところによると、中国では子供向けに書かれた歴史書という。これが面白かった。すっかり中国通になった気になり、見たことも行ったこともないその国に憧れたりもした。特に面白く、いまでも頭の片隅に残っていることは、酒池肉林とか臥薪嘗胆とか言う言葉だ。こうした日本でも普通に使われている言葉が中国から来たことを知り、さらに興味が湧いた。また、多くの登場人物についても多士済々。項羽と劉邦の争いや秦の始皇帝のことなど面白くまた楽しく読み、いや何度も読み返した。こうしたことは、その後の私の人生に大きな影響を及ぼしとことは言うまでもない。この本はその後引っ越しをしたりしたので、私の手元にはない。今となっては懐かしく今度古書店へ行って探してみたいものだ。

この欄では、これまでの数多の本から受けた影響と言うものを書きとめ、私の人生を振り返ってみたい。

青山光雅 AOYAMA Mitsumasa

京都伏見出身。立教大学院修士課程フランス文学専攻(シャトー・ブリアン)修了。酉福ギャラリー創業
中学生の頃よりお茶(官休庵)・お花の稽古を始め、他に、書・料理・俳句・作陶に親しむ。『南青山ギャラリー物語』『祇園ものがたり』『睦美十選』『美のなごり』などを出版プロデュース。