Art history 美術史、Art theory 芸術理論 美術理論

ah-12

書籍:芸術の理解のために
著者:小林太市郎 発行:淡交新社 発行年:1961(昭和36年)
サイズ:18.3 x 13 x 2cm 頁:P.341
状態:B 可 カバーの背表紙の上が僅かにめくれ、表紙に細かいシミ、汚れ、巻頭図版にも一部シミ、 図版を参照したり本文には全く問題ない。
価格:¥3,300 (税込)

「芸術をはなれた人間の生活はない。」の一文から本書は始まる。
そしてそのことが分かれば、「そもそも人間の生活、この人生というものから死後のことまでよくわかってきて、 安心して悠々と楽しく人生を活きられるようになる。それで芸術がなんであるかをかんがえるのは、けっしてむだなことではない。」
と説き、幸福論にも通じる芸術論が展開する。

しかし、けっして小難しくない。たとえば、井原西鶴の「好色二代男」から引いて、
人間とは「欲に手足の付いたる者」と人間の本質をまず押さえてから、人間の存在は想像の世界と行為の世界と二つの世界にまたがっていると続く。
「行為の世界と想像の世界」の章では、
他人のうらやむ幸福を幸福だと思い違いするのは、自分を他人に従属させていることで、常に他人を基準として自分の幸福を他人の表情で計るものだから、 思い切って、自分じしんになるのを勧めている。自分じしんの中にいかなるものにも乱されない無限の幸福の源泉を見出すことができる、すなわち、 「夢が真実となり、現実が虚偽となる」とする。

それからいよいよ本題に入り、「芸術と社会」「作品はどうして生まれるか」「魂魄と芸術」「音楽と舞踊」「建築の美」...「工から芸へ」「絵画の奇跡」「詩と象徴」と 広範囲にわたり芸術への理解を促す。

最終章「芸術の栄光」から少し抜粋しよう。
「…芸術はただ単なる生活のアクセッサリーでは決してない。それは欲望の奴隷の悲惨な境涯からはなれるために、人間がその苦悩のどん底においてついにつくりだした 奇跡の光明にほかならない。実利と実用とにおしつぶされて圧死するばかりの運命のどん底において、必死の人間がついに体得したふしぎな反撥の力にほかならない。」